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循環器専門外来開設と CAVI(キャビィ)検査

2021/05/26

しずさと診療所医師 岡野高久

CAVI(キャビィ)検査とは血圧脈波検査と言われるもので、脈波や血圧を測定し、「沈黙の殺人者」と呼ばれる動脈硬化の程度を評価して心臓血管や脳血管の病気の早期診断に役立つ検査のひとつです。具体的な検査方法は以下のとおりです。あお向けに寝た状態で両腕と両足首の血圧と脈波を測定します。時間は5〜10分程度で、血圧測定や心電図検査と同じ感覚でできる簡単な検査です。予約なしで行えます。結果もすぐに出るので、その場で医師から診断が受けられます。

検査では、3つの項目:①動脈のかたさ②動脈の詰まり③血管年齢を測定します。
①動脈のかたさ…動脈のかたさを表すのがCAVI(キャビィ)です。動脈硬化が進行するほど数値は高くなります。9・0を超えると約半数で脳動脈か心臓の動脈(冠動脈)に動脈硬化症を発症している可能性があります。

②動脈の詰まり…足の動脈の狭さや詰まりを表すのがABI(エービーアイ)です。足首の血圧は、横になった状態で測定すると、健康な人では腕の血圧と同じくらいか少し高い値となります。しかし、足の動脈が狭くなり詰まっている場合、腕の血圧に比べて足首の血圧は低くなります。「腕の血圧」と「足首の血圧」の比率をみて足の動脈の詰まりを診断します。その値が0・9未満であると詰まっている可能性が高く、その値が低いほど重症になります。足の動脈の硬化や詰まりがある場合、心臓血管や脳血管の病気の合併を早期に発見するのに役立ちます。

③血管年齢…血管年齢は、同じ性別、同年齢の健康な人のCAVI平均値と比較して、何歳の人の血管のかたさと同じくらいかを血管年齢として表して判定します。CAVIが9・0未満と良好であっても「血管年齢」の高い場合、動脈硬化症の進行が早いと考えられます。

動脈硬化症とは
善玉コレステロール(HDLコレステロール)とか悪玉コレステロール(LDLコレステロール)という言葉がしばしばテレビ番組、新聞、雑誌で取り上げられ、動脈硬化と関連する心臓、脳血管の病気が注目されています。近年、動脈硬化が原因の心臓血管や脳血管の病気は増え続けて、日本人の死亡原因の3割近くを占めて、ガンの死亡割合と同じくらいになってきています。動脈硬化とは文字通り「動脈がかたくなる」ことです。動脈は心臓から送り出される血液を全身に運ぶパイプのような血管で、本来、容易に破れたり詰まったりしないような強さと弾力性(しなやかさ)を持っています。動脈硬化が進行して血管がかたくなると心臓に大きな負担がかかり、高血圧、心肥大、心不全などの心臓の病気を引き起こします。
また、動脈硬化症では動脈が硬くなるだけでなく狭くなることも問題です。血管が狭くなったり詰まったりすると、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症といったさまざまな重い病気を引き起こします。血管が破れた場合は、クモ膜下出血などの脳出血をきたします。心臓血管や脳血管の病気の原因となる動脈硬化症ですが、さらに怖いのは「気づきにくい」こと、自覚症状に乏しいことです。よって動脈硬化症は「沈黙の殺人者」=「サイレントキラー」と呼ばれています。たとえば、心筋梗塞の場合、心臓の動脈である冠動脈が閉塞して心臓の筋肉が酸素不足に陥り壊死し、最悪の場合は心臓が停止してしまいます。
しかし冠動脈がかなり狭くなるまで胸の痛みなどの自覚症状がなく、そのような自覚症状が出たときはすでに重症化していことも多いです。したがって、手遅れになる前に、日常から血管の状態、動脈硬化の程度や状態をチェックすることはとても重要です。人は誰でも年齢とともに動脈硬化が進みます(ある種の老化現象とも言えるでしょう)。しかし、同じ年齢であっても動脈硬化の程度は個人差があります。年齢だけでなく、「高血圧」「高血糖」「脂質異常症」「高尿酸血症」「ストレス」「喫煙」といった生活習慣との関係が深いことがわかっています。これら生活習慣病を持っている人は特に動脈硬化症の進行が早いので、早期の検査が必要とされます。簡単に発見できる方法、それがCAVI(キャビィ)検査です。
動脈硬化症の進行をおさえるには、生活習慣病のある人はまずその治療が必要です。そのほか適正な運動やバランスの良い食事も動脈硬化症の進行をおさえ、予防にも効果的です。

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